桜吹雪~運命~
「…良いんですか?」
「怪我人を追いだすほど、わしは悪くない」
「…ありがとうございます!」
遠矢くん…良かったね。
「安心せぇ。
この海鳴村は、三神村の奴など来ない。
平和な村じゃよ」
「そのようですね…」
「食費のことも心配するな。
この小町が、お前さんの分まで働いてくれる」
ニヤァ~ッと悪魔の笑みを浮かべるばぁちゃん。
…まぁ“働かざる者食うべからず”をモットーに掲げるばぁちゃんだけど、怪我人を働かせるわけにはいかないでしょうね。
こりゃ、文句は言えない…。
「そんな…悪いですよ。
別に僕、怪我はしていますけど、働けないわけではないです。
事実、この足で山を乗り越えてきましたから」
「心配せんで良いぞ」
「小町さん女の子ですし…」
「小町は男以上に男らしいぞ」
ばぁちゃん…。
そんな嘘をペラペラと話さないでよ……。
「良いんですか…?小町さん」
「…ッ」
可愛らしい黒目に見つめられ、あたしはドキッとした。
「大丈夫。
あたしに任せて。
遠矢くんは、大人しく怪我の治療をして?」
内心冷や汗をかきながら、あたしは笑った。