桜吹雪~運命~
現代ではないので、当たり前だけど街灯はない。
お昼前の明るい時刻で良かったと思う。
ちなみにばぁちゃんの家にカレンダーみたいなのはあるけど、時計はない。
だから、今は何時とかはわからない。
いつも、ばぁちゃんが「お昼食べてきなさい」って言ってくれるから。
ばぁちゃんが言う時刻を、あたしは正午と考えていた。
隣村で用事を済ませ、あたしは海鳴村へ帰っていた。
手には、大きな大根。
ばぁちゃんから頼まれたモノだ。
大根を手に持つなんて、今時あり得ないよね。
この時代だからこそ、あり得る話だ。
「もし、そこのお嬢さん」
ん?あたし?
あたしは振り向き、声の主を探した。
「上ですよ、上」
上?
あたしは言われた方向を向いた。
すると、木の上に男の人がいるのが見えた。
男の人はあたしが見つけたことを確認し、スタッと前に下りてきた。
運動神経、抜群で羨ましい…。