桜吹雪~運命~
「本来、三神家に仕えぬ者は、我々三神家の人間を嫌います。
小町さんは、わたくしを見ても逃げたりはしない。
抱くのは、多少の恐怖心だけですね」
あー…確かに。
もしこれがばぁちゃんは紅葉さん、遠矢くんなら、すぐに王司さんから離れるだろうな。
あたしが今の時代の人じゃないから、こんなに素直に話せるのかもしれない。
「久しぶりです。
こんなに三神家に仕える以外の者と話すのは」
笑顔は相変わらず冷たいけど、王司さんは嬉しそうに笑う。
「…っと、いけない。
こんな所で油を売る暇などないのでした。
では、わたくしはここで失礼いたします」
王司さんは踵を返す。
―――と思ったら、振り向き、あたしの腕を掴んだ。
目の前に、王司さんの綺麗な顔がある。
「もし、王政様が現れ、匿うのでありましたら、小町さんでも殺させていただきます。
小町さんだけでなく、小町さんに関わる全ての人を、抹殺いたします」
「お、王司さんっ…?」
「冗談ではありません。
わたくしをはじめとする三神家は、王政様を匿ったり守ろうとする方たちを殺すと決めております。
もし王政様が現れましたら、すぐ三神村へ帰るようお伝えください。
…よろしいですね?小町さん」
あたしは小さく、何度も頷いた。
王司さんの凍てついた視線は、
冗談だとも、嘘だとも思えなかった……。