桜吹雪~運命~







あたしはこの桜広場に、家族で遊びに来ていた。

桜広場は毎年4月1日に、桜祭りというものを行う。

桜を見ながら、屋台などで買った食べ物を食べると言う、色々な意味でオイシイお祭り。



その日、あたしは迷子になった。

家族の行方が見えなくて、あたしは泣いていたんだ。

…この桜の下で。



すると、見知らぬ男の子が、あたしに近寄ってきた。

あたしと年齢は違わないぐらいの、同じ背丈の男の子。




『…どうしたの?』

『迷子にね…ヒグッなっちゃったの……』

『じゃあ、ボクが傍にいてあげる』

『良いの…?』

『うん。
ボクは桜の精だから!』



今聞くと笑い話だけど、当時のあたしは嬉しかった。

あたしは“桜の精”と名乗る少年と、沢山話した。



『小町!』

『あ、ママ!』



お母さんがあたしを見つけてくれた。

あたしは“桜の精”にお礼を言うため、振り向いた。



しかし、“桜の精”はいなくなっていたのだ。



本当に彼は、“桜の精”だったのかもしれない。

迷子で泣いていたあたしに、声をかけてくれたのかもしれない。







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