桜吹雪~運命~
ある日。
あたしは曇り空の下、ばぁちゃんや紅葉さん、海鳴村村長の海鳴さんと一緒に田んぼ仕事をしていた。
海鳴さんは、村長なだけあって、優しく温厚だが、何かあったら頑固親父になりそうな雰囲気漂う、良いおじいちゃんだ。
どこから現れたかわからないあたしや遠矢くんを、気に入ってくれ、優しくしてくれる。
人見知りが激しいことや、人間関係を築くのが苦手になっていたあたしにも。
つくづく、この村の人は良い人ばかりだと実感出来る。
「…見つけましたよ」
今にも雨が降りそうな天気の中、響いた冷たい声。
聞き覚えのある声に、あたしは振り向いた。
「…王司さん」
声の主は、三神王司さん。
行方不明の100代目三神王政の執事さんだ。
この間は1人だったが、今は周りに刀を腰に忍ばせた男たちを連れている。
三神家など知らないあたしでも、その男たちが三神家に使える方たちだとわかった。
「…何の用じゃ」
笑顔を絶やさない海鳴さんが、あたしたちより1歩前に出る。