桜吹雪~運命~







「…ッ」




後ろを振り向いたあたしは、息を飲んだ。





笑顔であたしに話しかけてくれた村人たちが、王司さんや遠矢くんを鋭い冷たい瞳で見つめていた。

誰1人何も言わないけど、その視線から思うことがわかる。







『三神家の人間は、ここから出て行け』






…そうだ。

海鳴村の人たちは、三神家によって大切な人を殺されたんだ。

皆涙をこらえながら山を乗り越え、この地にやってきた。

住むところも食べ物も何もかも失った遺族たちを見ていたくないから。

海鳴さんは村長として立ち上がり、海鳴村を立ち上げたんだ。





遠矢くんが憎き三神王政とわかった今。

…誰も、遠矢くんに優しくはしてくれない。






「…ッ!」

「わかりましたでしょう王政様。
三神村に帰った方が、安心です」




王司さんは後ろの人たちに合図を送った。




すると、遠矢くんの目の前に、時代劇などで見かける、牛車が現れた。







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