桜吹雪~運命~
ばぁちゃんは馬を操るため、あたしたちの会話は聞こえていない。
「わしは昔、梅子と一緒に三神村を抜け出してきたんじゃけど」
「うん」
「途中で三神家の奴らに見つかっての。
わしは小せぇ頃から剣を習っていてな。
必死に反撃したんじゃが、向こうはプロ。
アッサリ負けて、死を覚悟したんじゃ」
「そうなんだ…」
「そんな時、梅子がわしを庇ったんじゃよ。
そして、その辺に落ちていた木の枝で、三神家の連中に勝ったんじゃよ」
えぇ!?
木の枝で、刀に勝った!?
ばぁちゃん、凄い!!
「木の枝も運良く太かったからの。
細かったりしたら、さすがの梅子でも負けていたはずじゃ」
「ばぁちゃん、凄いんだね」
「じゃろ?
そいでわしらは三神家の目を盗んで海鳴村に来たんじゃ。
梅子がいなかったら、わしは生きていなかった」
紅葉さんにとって、ばぁちゃんは恩人なんだ…。
「ほれ、着くぞ」
ばぁちゃんの大きな声がする。
てか早ッ!
この牛車、三神家のより凄いんじゃないの?