恋するオトコのクリスマス
「久遠って、コイツが……」


男は博樹の手を振りほどき、嫉妬全開で睨んでいる。迂闊なことを言えば殴りかかられそうで、博樹はひとまず相手の出方を見ることにした。

だが、それを遮ったのが志穂だった。

彼女は博樹に抱きつくようにして、男との間に立ちはだかる。


「ダメよ! 手は出さないで。久遠先生のせいじゃないんだからっ!!」

「おまえ……本心から言ってるのか?」

「そうよ。私たち、子供のころから一緒だったから、勘違いしちゃったんだと思う。ごめんね……たっちゃん」


志穂の言葉を聞くなり、男は背中を向けて走り去った。

ホテルの前の国道を走る車の音だけがやけに響く。

自分にしがみ付いたままの志穂を振り払うこともできず、博樹は立ち尽くしていた。


「すみません、すみません、久遠先生……私」


泣きながら謝る志穂をどう扱えばいいのだろう?
博樹が困り果てていたとき、


「その人……療育教室の志穂先生よね? いったいどういうことか、わたしにもわかるように説明してもらえる?」


冷ややかな奈々子の声が聞こえ、さらに追い込まれてしまうのだった。

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