恋するオトコのクリスマス
「本当に別れてしまうのかしら……」


タクシーのテールランプが見えなくなり、奈々子がポツリと呟いた。


「別れたくはないんだろうな。あとはお互いの頑張りってトコかな?」

「頑張ったらどうにかなるものなの?」

「なるよ。たとえば――本当はレンタル不可のくせに、平気な顔をしてたりするのは、頑張る方向を間違えてる見本だな」


博樹はマフラーを外し、寒そうに手をこする奈々子の首に巻いてやった。

するとてきめん、彼女は頬を赤くしながら反論を始める。


「それは……志穂先生が気の毒だって思ったから。だって、わたしのときは簡単に承諾してくれたじゃない? そんなに深く考えずに引き受けてくれた気がして……」 

「俺はそんなイイ人じゃないって。君だから、下心があったから引き受けたんだ。そのまま、本当の婚約者になれたらラッキー、なんてね」


言いながら、火照った奈々子の頰に軽く口づける。

彼女はほんのちょっとだけ躊躇うようにしたあと、自分から博樹にもたれかかってきた。


「ホ、ホントは……断ってくれて、嬉しかった。本当に愛されてるんだって思えて……志穂先生には悪いけど、博樹さんはわたしのモノよって……優しくないわよね?」

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