恋するオトコのクリスマス
「そんなトコで優しくならないでくれ。独占欲丸出しでかまわない。なんたって、俺の心もカラダも全部、奈々子さんのモノだから」


それはきっと志穂も同じだろう。
彼女が本当に手を差し伸べて、抱き締めて欲しい相手は博樹ではない。そして、志穂だけを支えたいと思っている腕は他にある。


「奈々子さん、寒いんじゃないか? 手を出してごらん。俺が温めてあげよう」


そう言いながら左手を取り、密かに取り出した指輪を薬指に押し込む。
ひと目で婚約指輪とわかるような、ラウンド・ブリリアントカットのダイヤモンドリングだった。


「クリスマスプレゼントはもらったわ。それなのに……」


涙で声が詰まったように、彼女の瞳もダイヤモンドのように煌めいている。


「それとこれとは別だろう? 愛してるよ、奈々子さん」

「わたしも愛してる……幸せ過ぎて、怖いくらい」


ふたりは寄り添い、クリスマスの飾りに彩られたホテルのロビーを通り抜ける。
やがて暖かい部屋へと吸い込まれ……用意したコンドームを使いきるまで、クリスマス休暇を楽しんだのだった。





                        ~fin~
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