恋するオトコのクリスマス
「あの医者のトコへ行くのか?」
いつもは結んでいる髪を、今日はほどいていた。
しどけない雰囲気に、いつの間にこんな女っぽくなったのだろう、とあらためて思う。
二十二年あまり、ずっと見てきたつもりなのに……今の志穂の顔は、巽の知らない女の顔だった。
「俺に言われたくないって思ってんだろうけど、あの男のおまえを見る目に、特別なものはないぞ。それでも……アイツが好きか?」
「……」
志穂は口を引き結んだまま、何も答えようとしない。
「わかった……行けよ。おまえがここに住まないなら、親に頼んで引き払ってもらう。いっそ、あっちに骨を埋めてもいいかもな……心置きなく、パティシエの修業に励めるし」
そう言った瞬間、志穂は目を見開き、食い入るように巽の顔を見た。
「……うん……そのほうが、いいかも……」
彼女はそれだけ言うと、急いで靴を履き、巽とすれ違うように出て行く。
「たっちゃん……これまで、ありがと……仕事、頑張って」
最後の言葉が聞こえた直後、ドアが鈍い音を立てて閉まった。
いつもは結んでいる髪を、今日はほどいていた。
しどけない雰囲気に、いつの間にこんな女っぽくなったのだろう、とあらためて思う。
二十二年あまり、ずっと見てきたつもりなのに……今の志穂の顔は、巽の知らない女の顔だった。
「俺に言われたくないって思ってんだろうけど、あの男のおまえを見る目に、特別なものはないぞ。それでも……アイツが好きか?」
「……」
志穂は口を引き結んだまま、何も答えようとしない。
「わかった……行けよ。おまえがここに住まないなら、親に頼んで引き払ってもらう。いっそ、あっちに骨を埋めてもいいかもな……心置きなく、パティシエの修業に励めるし」
そう言った瞬間、志穂は目を見開き、食い入るように巽の顔を見た。
「……うん……そのほうが、いいかも……」
彼女はそれだけ言うと、急いで靴を履き、巽とすれ違うように出て行く。
「たっちゃん……これまで、ありがと……仕事、頑張って」
最後の言葉が聞こえた直後、ドアが鈍い音を立てて閉まった。