恋するオトコのクリスマス
「ダメじゃない」


志穂は巽の背中に手を回した。


「たっちゃん、好き……大好き。一生たっちゃんだけのモノになるから、お嫁さんに、し……て」


彼女の声が途切れたのは、ふたりの唇が重なったからだった。

欲しくて欲しくて堪らなかった唇。巽は飢えた獣のように、執拗にキスを繰り返す。しかも、キスするごとに離れたくなくなる。


「ああ、嫁さんにしてやる。今日中に田舎に帰って入籍しよう」

「たっちゃん……嬉しい」

「その前に、ひとつ確認しておきたいことがある。あの久遠って野郎、本当におまえにちょっかい出してるわけじゃないんだな?」


もしそうなら、差しで勝負をつけておかないと、安心して志穂をひとりにできない。


「久遠先生は受付の水谷さんと付き合ってるみたい。さっき、ホテルの駐車場にいたのも、恋人さんと一緒にイヴの夜を過ごすためなんだって……安心した?」


志穂はホッとしたように満面の笑みを浮かべる。

全身から力が抜けたようになる巽だが、ふいに抑えきれない思いが沸き上がってきた。そのまま、志穂の手首を掴み、廊下に押し倒す。


「た、たっちゃん!?」

「俺以外の男を好きだと言った罰だ。朝まで寝かさないから、覚悟しろよ」


そして――ふたりが廊下から寝室に移動するまで、約一時間を要したのだった。

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