恋するオトコのクリスマス
この状況をどうやって収拾しよう、と悩み始めたとき、コホンと咳払いが聞こえた。


「高千穂キャプテン、これ以上やると羽田の二の舞ですよ。続きは、デブリを済ませてからのほうがいいのでは?」


神谷は必死で笑いを堪えているようだ。

歩美相手には調子を崩されっ放しだが、そうそう他の人間に笑われたままの和也ではない。


「神谷コーパイの言うとおりです。この空港では三年前、今の私と同じことをして始末書を書かされたパイロットがいると聞きました。名前はたしか……」


和也がそこまで言ったとき、神谷は頭を振りながら片手を挙げた。


「はいはい、わかりました。――キャプテンは到着直後にトイレに駆け込んだということで。私たちは先にディスパッチルームに戻っています。但し、五分を過ぎたら始末書ですよ」


苦笑いを浮かべつつ、神谷はクルーを引き連れてこの場からいなくなる。

とたんに歩美が可笑しそうに口にした。


「ねえねえ、和也くんと同じって……キス、のことだよね? そんなことした人って他にもいるんだ」

「ああ、さっきの神谷コーパイだよ」

「え? ウソッ!?」

「押し倒す勢いで熱烈なラブシーンを繰り広げたって話。そのすぐあとに結婚して、今は一児の父だったかな」


和也が答えると、歩美はあろうことか「羨ましい~」などと頬を染めている。


「今の話のどこが羨ましいんだ?」

「だって、あんなにクールでカッコいい男の人に、熱烈に迫られちゃうなんて……奥さん幸せだよねぇ」


次の瞬間、和也は歩美を抱き締め、キスしていた。

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