わたしの想いがとどくように
夏、泣くほどの思いに気づく
7月の始め、朝、暁は久しぶりに早く教室にいった。すると、弥生が自分の席に座っていた。窓を開けて風を感じている。弥生は綺麗だ。前よりもずっと綺麗だ。少し憂いを帯びた雰囲気は、皆の前には出さない。もちろん、自分もあまりないのだ。ぼーっとしているので、いきなり話しかける。
「弥生、葉っぱはなにに見える?」
「んー、抹茶プリン?」
流石、切り返しが早い。
「ほー、で、退いてね」
弥生は暁にそう言われて、すぐに席を立つと、暁は座ってから、スケッチブックを取り出した。パラパラめくるのを、弥生は目を輝かせて見ていた。暁の席の前に座る。
「凄い!また腕をあげたね!」
「…そうか?」
暁はただ、デザインをしてる時は無になれた。だから、ずっと描いていた。仕事はだんだん増えている。暁がめくったページは、まだ描き途中のデザインがあった。
「…暁は、美華子に気持ちを伝えないの?」
弥生は暁の前の席に座っていた。弥生は暁が描いているデザインをぼーっと見ながら言った。弥生は察しが良い。自分がまだ美華子が好きだときっとわかっているんだ。
「俺、彼女いるのに?」
「関係ないよ。言うだけなら罪なんかないもの」
弥生は、真っ直ぐな瞳を暁にぶつけた。暁は、視線を外に逸らした。
「…じゃあ、俺が言う変わりにお前はバイト先で1ヶ月俺におごりな」
「いいよ!」
弥生はそう言った。暁はあまりにも呆気ないので、笑ってしまった。弥生は多分皆の気持ちを先に考えるんだろう。誰かのために動くのが、弥生にとっては当たり前なのだ。
「暁は、好きなことで仕事出来ていいね」
弥生はそう言うと、暁は言った。ずっと気になっていた。
「お前はやりたいことないの?」
「私…?」
「お前、興味あることないの?」
「…世界のニュース」
「へぇ!お前らしい!ジャーナリストとか?」
暁にそう言われて、弥生はそうかと思った。ジャーナリスか、考えたことなかった。世界の人を取材するのか、興味がわく。心がウキウキしてくる。弥生の表情の変化をみて、暁は首を傾げた。
「そっか!そっか!!ジャーナリストか!」
弥生は顔が晴れやかになった。暁は、ただ例えばで出したのに、弥生は何かスイッチが入ったらしい。
「暁、凄い!私ね、ずっと世界中の人に関わりたい。皆を幸せにしたいって思ってたの。でもね、その前に世界について知らなくちゃいけないじゃない?ぴったりの仕事だね!」
弥生は満面の笑みを浮かべていた。暁はそれを見て安心した。
「お前に似合うんじゃないの?」
「…うん!私、お祖母さまに報告する!」
弥生はそう言うと、暁はなんとなく弥生の頭を撫でた。可愛いやつだなと思った。クラスメイトが集まってくる。暁はスケッチブックを閉まった。チャイムが鳴ると、弥生は立ち上がって、暁にそっとウィンクをした。陸斗はそれを見ていた。