わたしの想いがとどくように
「席つけー」
その声で、沈黙が止んだ。担任が教室に入ってきた。弥生は、少しほっとした。気まずい雰囲気は好きではなかった。
しかし、自分が思った以上に心の痛みは酷かった。真実を知らされてほんとは足ががくがくしている。でも、ここで黙りこむことは、弥生には出来なかった。自分の気持ちを隠すのに、明るくするということを身に着けたのだ。いつだってそうだった。もともと明るいので、自分でも気がついていないことだ。担任はやはり、美華子の兄である陸斗だ。美華子と同様に陸斗は髪の色が黒い。そして、背が高くて、美華子同様に目立つ。フランス人形のような顔立ちは同様である。
「これから始業式なので、講堂に行きます」
「りっくん、先生くさい!」
弥生は立ち上がって言った。
「あのなぁ、弥生、上宮先生って言えよ」
あきれ顔で、普通の口調でそういった。少し口が悪いのが、もともとの陸斗だ。
「皆に"りっくん"って呼ばれてるもんね」
弥生はいたずらっぽく笑った。自分が広げたのだ。
毎回毎回、授業でも話かけるときでも、癖で”りっくん”といってしまう。
「お前のせいだ!」
陸斗はわざわざ弥生のもとに来て、サラサラな髪をくしゃくしゃにした。
指が長くて、綺麗な手はピアノをやっていたからだろう。
「うわー!りっくんのバカ!!」
手で溶かしながら、弥生はそういった。
しかし、もともとサラサラな髪は、自然に戻っていく。クラスほとんどが笑っていた。弥生が気にかかったのは、暁だった。
暁はずっと下を向いていた。陸斗を気がついていたのだろう。幼いときから見てきたので、陸斗がどんなに良い人なのかは知っている。席から立つと、廊下に全員ならんだ。講堂までいき、始業式が始まると、弥生はいろいろ考えていた。
3人の関係に気付いたのは、いつからだっただろう…。弥生は身に着けていた白いクロスネックレスを握った。大事なもの。幸奈とお揃いの自分にとってはお守りだ。高校にあがり前に一緒に出かけたときに買いあったものだ。そのときはすでに2人の関係には気がついていた。
幸奈と美華子が両思いだと…
だが、自分のわがままを聞いてくれた。きっと幸奈にとっては何の意味も持たないものかもしれない。幸奈がこのネックレスをいつもつけてることが証拠なのかもしれない。弥生は俯いて机に肘をつき、手を頬にあてていた。どうせ、昔から決まっていたことだった。自分の思いは告げることもなく消えてゆく。それを幸奈は振り返ってみていた。
その声で、沈黙が止んだ。担任が教室に入ってきた。弥生は、少しほっとした。気まずい雰囲気は好きではなかった。
しかし、自分が思った以上に心の痛みは酷かった。真実を知らされてほんとは足ががくがくしている。でも、ここで黙りこむことは、弥生には出来なかった。自分の気持ちを隠すのに、明るくするということを身に着けたのだ。いつだってそうだった。もともと明るいので、自分でも気がついていないことだ。担任はやはり、美華子の兄である陸斗だ。美華子と同様に陸斗は髪の色が黒い。そして、背が高くて、美華子同様に目立つ。フランス人形のような顔立ちは同様である。
「これから始業式なので、講堂に行きます」
「りっくん、先生くさい!」
弥生は立ち上がって言った。
「あのなぁ、弥生、上宮先生って言えよ」
あきれ顔で、普通の口調でそういった。少し口が悪いのが、もともとの陸斗だ。
「皆に"りっくん"って呼ばれてるもんね」
弥生はいたずらっぽく笑った。自分が広げたのだ。
毎回毎回、授業でも話かけるときでも、癖で”りっくん”といってしまう。
「お前のせいだ!」
陸斗はわざわざ弥生のもとに来て、サラサラな髪をくしゃくしゃにした。
指が長くて、綺麗な手はピアノをやっていたからだろう。
「うわー!りっくんのバカ!!」
手で溶かしながら、弥生はそういった。
しかし、もともとサラサラな髪は、自然に戻っていく。クラスほとんどが笑っていた。弥生が気にかかったのは、暁だった。
暁はずっと下を向いていた。陸斗を気がついていたのだろう。幼いときから見てきたので、陸斗がどんなに良い人なのかは知っている。席から立つと、廊下に全員ならんだ。講堂までいき、始業式が始まると、弥生はいろいろ考えていた。
3人の関係に気付いたのは、いつからだっただろう…。弥生は身に着けていた白いクロスネックレスを握った。大事なもの。幸奈とお揃いの自分にとってはお守りだ。高校にあがり前に一緒に出かけたときに買いあったものだ。そのときはすでに2人の関係には気がついていた。
幸奈と美華子が両思いだと…
だが、自分のわがままを聞いてくれた。きっと幸奈にとっては何の意味も持たないものかもしれない。幸奈がこのネックレスをいつもつけてることが証拠なのかもしれない。弥生は俯いて机に肘をつき、手を頬にあてていた。どうせ、昔から決まっていたことだった。自分の思いは告げることもなく消えてゆく。それを幸奈は振り返ってみていた。