わたしの想いがとどくように
始業式が終わり、教室に戻ると、だHRが残っていた。弥生は陸斗の低い声を聞きながら、幸奈の背中を見た。また大きくなった。また背が高くなった。男らしくなった。なのに、変わらない。優しくて、凛とした性格、やるときはしっかりする、だけどあまり笑わない。自分の冗談で笑うときもあるけれど…
きっと、美華子の前なら心を許せ、安心できるのだろう。弥生は机に伏せた。そして窓から外を見ながら呟いた。
「運命なんて…」
それは誰にも聞こえない声だった。誰にも気付かれないように
運命なんて信じない。
お守りもお願いもいままでありとあらゆるものに願ったけれど、かわることなんかなかった。身を任せよう、祖父が握る人生に…
諦めるしかない。もうこれ以上足掻いたって、無意味なのだから。
HRが終わると、弥生は暁の袖をひっぱり、室内庭園にいった。弥生が一番好きな場所だ。2人でベンチに座った。
「春は花が一番綺麗に咲くね」
弥生は、周りを見ながらそういった。
園芸部が育てている花がカラフルに咲いている。暁は、それに視線を向けた。
「そうだな」
「空は青くて透き通ってるね」
「うん」
弥生は上を見上げていた。光が差し飲むこの庭園が好きだ。四季折々いろいろな花が咲く。暁は、弥生の清々しい顔を見ていった。本題に入るのに、沈黙が5分くらいあった。
「俺はさ…ずっと美華子が好きだった」
「知ってるよ」
「それで幸奈は大事な友達だ」
「うん」
「すっげーイラついた!気を使ってなんだろうけどさ、言わなかったこととか、美華子が幸奈を選んだこととか、運命に、でも幸奈が本音を言う相手って、俺と弥生以外にはいないだろうし…」
「…そか、よかった」
「お前はさ、どう思うの?騙されてたって思わないわけ?」
もう13年の付き合いなのに、幸奈も美華子も言ってはくれなかった。でも、2人が思うより簡単に崩れるような関係じゃない。
暁は、スケッチブックを取り出して、周りの花をスケッチしていた。
「…幸奈も美華子も、関係を変えたくなかったんだよね。言われなかったのはショックだよ。でも私は嬉しいな、暁の気持ちは、知ってたけど、幸奈の気持ちにも気付いてた。2人ともわかりやすいんだもん!」
暁は弥生の笑顔を見て、ほっとした。弥生は変わらない明るい笑顔をしていたから。
「お前は、いいの?」
「えっ?」
「幸奈のこと好きじゃん」
弥生はきょとんとした。暁は察しが良いから、気がついているのか。
弥生がきょとんとしているのを見て、暁は言った。しかし、気づかれないようにずっとしてきたのに、どうしてだろう?
「聞いたんだよ、お前と幸乃さんが話してるの」
弥生は納得した。幸奈が好きな気持ちは、しまっておくと決めたから、知っているのは数人だけ、もちろん美華子にも言っていない。弥生は笑って見せた。
「私、好きの気持ちをくれただけでいいんだよ…」
一気に弥生の周りの空気が凛としたことに暁は驚いた。いつも一緒にいる弥生は、柔らかくて元気で綺麗という感じはしない。なのに、今目の前にいる弥生は綺麗という言葉が一番似合うような気がする。
「本当か?」
「嘘!が半分かな」
暁はほっとした。弥生は笑っていつもおちゃらけ顔に戻ったからだ。弥生はいろいろな表情をする。真面目な顔、笑う顔、凛とした顔、でも暁のなかに泣き顔の弥生は1つもなかった。暁は座ったまま、弥生は立ち上がる。
「その嘘って何だよ」
暁がそう言うと、弥生は言った。
「私がそれを幸奈に言えないことが悔しいの」
「"仕来たり"?」
弥生はどうでしょうと言った。
「じゃ、あたしはバイトに行くかなぁ」
「おう、ありがとうな」
「ううん、あ!暁は"運命"にイラついたって言ってたけど、私、運命は信じないよ!神様なんて気紛れなんだから!」
弥生はそういうと庭園から出ていった。暁は、弥生の言葉に少し考えさせられた。
弥生は走りながら思った。バイトのことだけを考えた。暁にいったことは、自分がしたい欲望をぶつけただけだ。運命は変えられるんだよ、それは祖母から昔いわれた言葉、だから弥生は運命は信じない。
美華子も幸奈も、自分たちで道を開いたんだ。幸奈が自分を選ばないのは、昔から分かっていた。幸奈が美華子を好きなのに気付いていた。自分が入り込める隙間なんて1ミリだってなかった。悲しいと思ったらいけない。つらいと思ったらいけない。
中学校から自分に言い聞かせてきた。良かった。
自分の知ってる子で、しかも昔から仲良しの美華子で、安心できる。
弥生は心で何回も言い聞かせた。
突き付けられた事実を受け止めるように…
弥生は空を見上げながら、そのまま走ってバイト先のカフェまでいった。
きっと、美華子の前なら心を許せ、安心できるのだろう。弥生は机に伏せた。そして窓から外を見ながら呟いた。
「運命なんて…」
それは誰にも聞こえない声だった。誰にも気付かれないように
運命なんて信じない。
お守りもお願いもいままでありとあらゆるものに願ったけれど、かわることなんかなかった。身を任せよう、祖父が握る人生に…
諦めるしかない。もうこれ以上足掻いたって、無意味なのだから。
HRが終わると、弥生は暁の袖をひっぱり、室内庭園にいった。弥生が一番好きな場所だ。2人でベンチに座った。
「春は花が一番綺麗に咲くね」
弥生は、周りを見ながらそういった。
園芸部が育てている花がカラフルに咲いている。暁は、それに視線を向けた。
「そうだな」
「空は青くて透き通ってるね」
「うん」
弥生は上を見上げていた。光が差し飲むこの庭園が好きだ。四季折々いろいろな花が咲く。暁は、弥生の清々しい顔を見ていった。本題に入るのに、沈黙が5分くらいあった。
「俺はさ…ずっと美華子が好きだった」
「知ってるよ」
「それで幸奈は大事な友達だ」
「うん」
「すっげーイラついた!気を使ってなんだろうけどさ、言わなかったこととか、美華子が幸奈を選んだこととか、運命に、でも幸奈が本音を言う相手って、俺と弥生以外にはいないだろうし…」
「…そか、よかった」
「お前はさ、どう思うの?騙されてたって思わないわけ?」
もう13年の付き合いなのに、幸奈も美華子も言ってはくれなかった。でも、2人が思うより簡単に崩れるような関係じゃない。
暁は、スケッチブックを取り出して、周りの花をスケッチしていた。
「…幸奈も美華子も、関係を変えたくなかったんだよね。言われなかったのはショックだよ。でも私は嬉しいな、暁の気持ちは、知ってたけど、幸奈の気持ちにも気付いてた。2人ともわかりやすいんだもん!」
暁は弥生の笑顔を見て、ほっとした。弥生は変わらない明るい笑顔をしていたから。
「お前は、いいの?」
「えっ?」
「幸奈のこと好きじゃん」
弥生はきょとんとした。暁は察しが良いから、気がついているのか。
弥生がきょとんとしているのを見て、暁は言った。しかし、気づかれないようにずっとしてきたのに、どうしてだろう?
「聞いたんだよ、お前と幸乃さんが話してるの」
弥生は納得した。幸奈が好きな気持ちは、しまっておくと決めたから、知っているのは数人だけ、もちろん美華子にも言っていない。弥生は笑って見せた。
「私、好きの気持ちをくれただけでいいんだよ…」
一気に弥生の周りの空気が凛としたことに暁は驚いた。いつも一緒にいる弥生は、柔らかくて元気で綺麗という感じはしない。なのに、今目の前にいる弥生は綺麗という言葉が一番似合うような気がする。
「本当か?」
「嘘!が半分かな」
暁はほっとした。弥生は笑っていつもおちゃらけ顔に戻ったからだ。弥生はいろいろな表情をする。真面目な顔、笑う顔、凛とした顔、でも暁のなかに泣き顔の弥生は1つもなかった。暁は座ったまま、弥生は立ち上がる。
「その嘘って何だよ」
暁がそう言うと、弥生は言った。
「私がそれを幸奈に言えないことが悔しいの」
「"仕来たり"?」
弥生はどうでしょうと言った。
「じゃ、あたしはバイトに行くかなぁ」
「おう、ありがとうな」
「ううん、あ!暁は"運命"にイラついたって言ってたけど、私、運命は信じないよ!神様なんて気紛れなんだから!」
弥生はそういうと庭園から出ていった。暁は、弥生の言葉に少し考えさせられた。
弥生は走りながら思った。バイトのことだけを考えた。暁にいったことは、自分がしたい欲望をぶつけただけだ。運命は変えられるんだよ、それは祖母から昔いわれた言葉、だから弥生は運命は信じない。
美華子も幸奈も、自分たちで道を開いたんだ。幸奈が自分を選ばないのは、昔から分かっていた。幸奈が美華子を好きなのに気付いていた。自分が入り込める隙間なんて1ミリだってなかった。悲しいと思ったらいけない。つらいと思ったらいけない。
中学校から自分に言い聞かせてきた。良かった。
自分の知ってる子で、しかも昔から仲良しの美華子で、安心できる。
弥生は心で何回も言い聞かせた。
突き付けられた事実を受け止めるように…
弥生は空を見上げながら、そのまま走ってバイト先のカフェまでいった。