水泳のお時間
五限と六限を挟んだ休憩時間

浮かない気持ちのまま教室に戻ったわたしは、おそるおそるドアの隙間から瀬戸くんの姿を探す。


そのまま一人コソコソしていたら、後ろから誰かにツンツンと指で背中をつつかれた。


「桐谷」

「せ、せせせ瀬戸くん!」


とっさに後ろを振り返ると、瀬戸くんの顔が目の前にあって。

ビックリしたわたしは思わず大げさな声を出してしまう。


するとそんなわたしを見て、瀬戸くんはとたんに拳で口元を隠しながら、クックと肩を揺らして笑った。


「スゲー分かりやすい反応」

「え?あっ…」

「五限の実験、桐谷いなかっただろ?何かあった?」


瀬戸くんの言葉にわたしの心臓がドキリと音をたてる。


少しでも瀬戸くんに気にかけてもらえたのかと嬉しくなった反面、わたしの心はすぐに曇ってしまう。


…クセなのかな。視線をあげてみると、目の前には少し顔を傾けながらわたしを見つめている瀬戸くん。


わたしは覚悟を決めたように両手をギュッと握り締めると、目を押し瞑った。
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