水泳のお時間
学校に居たときは時間が経つのがあんなにも長く感じたのに

瀬戸くんと過ごす時間は本当にあっという間。


気がつくと、もう自宅の前まで着いてしまっていて

瀬戸くんとお別れしなくちゃいけない時間になっていた。


「はい、これ」

「あ、ありがとうございます…っ」


さよならを言われるのが寂しくて、つい落ち込んでしまいそうになりつつも


瀬戸くんから手渡された荷物に、私はあわててそれを受け取るとペコッ!と頭をさげる。


だけどやっぱり寂しさは消えなくて

わたしは瀬戸くんから受け取った自分の荷物をとっさに抱きしめると、勇気をふりしぼって口を開いてみた。


「瀬戸くん、あの…」

「なに?」

「わたし…あ、明日もまた練習、教えてほしいです。だから、その…」


…だから明日もまた、瀬戸くんの家…行ってもいいですか?


そう言いたいのに、その一言がどうしても言えなくて、声につまってしまって。


荷物を抱えたきり、そのままモジモジしていたら、ふいにわたしの髪に瀬戸くんの指が触れた。
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