水泳のお時間
「それじゃあ今日の練習はもう…」


終わり、なの…?

わたしがちゃんと、出来なかったから…


そう思ったら悲しくて、落ち込んでしまって。

すっかり落胆した気持ちのまま、無意識にベッドから立ち上がろうとしたら、突然その手をつかまれた。


「!瀬戸く…」

「帰んの?まだ帰さないよ」

「?でも」

「息の練習は終わりだと言ったけど、今日の練習が終わりだとは言ってないよ」

「えっ?」


瀬戸くんの言葉にわたしは目を見開く。


そのままポカンとしてしまったわたしに、瀬戸くんはフッと微笑んだ。


「言っただろ?今日はもっと…ちゃんと教えてあげるって」


どくん。


まるで息を吹きかけるように囁かれた瀬戸くんの甘い言葉に、わたしの心臓が大きく波打つ。

ハッとして、とっさに後ろをふりかえった時には

瀬戸くんがわたしの肩をつかんで上から見下ろしていた。


「しゃがんで」

「あっ…は、はい…っ」


命令の言葉にさえ、体が熱くなってしまう。


そのまま床に座るよう促されて

まだ瀬戸くんとの時間は終わらないんだと嬉しくなったと同時に、本当の水泳指導はこれからなんだと思った。
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