水泳のお時間
「…こうしてるとなんか、桐谷がますます泳げない小学生みたいに見えるな」

「え、えぇっ?!」

「はは。うそだよ」


目の前に映る…瀬戸くんの楽しそうな顔。


ビート板代わりに繋いだ手が…嬉しくて

ゴールまで、わたしを連れて行ってくれるこの手が、優しくて。


今までずっと、抑えていた気持ちが今にも溢れ出しそうになった。


「なんでかな。桐谷を見てると、からかいたくなっちゃうんだ」

「……」


――瀬戸、くん。

瀬戸くん。


「…桐谷?」


好き。

大好き。


本当は悲しいくらい、あなたが、こんなに…こんなに好き。


こんなにも貴方が好きで、そして今、こんなにも目の前に…傍に、瀬戸くんを感じられるのに


「桐谷、どうした?」


届かなくて


胸が

苦しいよ…。
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