水泳のお時間
そのあと慌しくクラスの教室へと駆け込んだわたしは

すぐさま窓の方へと走り出し、ハラハラした気持ちで外の様子を覗き込む。


すると窓越しに、学校の正門を出る様子の瀬戸くんの姿を確認し

思わずホッと胸を撫でおろした。


そしてそのまま力が抜けたように壁にもたれかかると、同時に襲ってきたのは、罪悪感…。


「…っ…」


まただ…

わたしはまた、瀬戸くんにウソを…ついてしまった。


これで二回目。


本当は忘れ物なんてしてない。

宿題のプリントだって、本当はずっと前に提出してる。


たけど…やっぱり怖い。周りの視線も噂も、そして…瀬戸くんの気持ちも。

今まで考えもしなかった事が目まぐるしい速度で起こって

嬉しく思う反面、本当は頭も…体もついて行けてなくて


やっぱり一人でちゃんと泳げるようになるまではまだ

堂々と胸を張って瀬戸くんの隣を歩ける、自信がない…。


「――桐谷さん」

「?!」


そのまま床にしゃがみこんで落ち込んでいたら、突然後ろの方から声がして。


その声にハッとしてとっさに後ろを振り返ると、

そこには今朝…倒れたわたしを助けてくれた小野くんが教室のドアに寄りかかっていた。
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