水泳のお時間
「――遅かったね。何かあった?」
約束の時間よりだいぶ遅れてプールへと駆け込んだわたしに
瀬戸くんは咎めようとしなければ、逆にわたしの事を心配していてくれて。
わたしはとっさに顔を俯かせた。
「遅れてごめんなさい…」
「いいよ。それより、今日はスクール水着なんだ」
「!これはその…っ、梅雨で、水着が乾かなくて!なので仕方なく、こ、これを…着てきたんです」
とっさにそう答えると、わたしは今すぐ自分の体を隠したくて、逃げるようにプールへ飛び込む。
両手は胸を押えたまま、ぎこちなく笑ってみせたわたしに
瀬戸くんは一瞬何か気づいたように見えたかと思うと、何を思ったのか突然こっちに近づいてきた。
「あ、あの…、ぁっ…」
気がついた時には、瀬戸くんは私のすぐ目の前に立っていて
突然胸を押さえていた両手を掴まれたかと思うと、それを強引に引き剥がされてしまった。
「せ、瀬戸く…?」
「……」
手は掴まれたまま、無言で私の胸元を見つめてくる瀬戸くんに、体が熱くなって。
そのまま戸惑っていたら、ふいに瀬戸くんの細長い指先が鎖骨に触れ
とっさに声をかけようとしたわたしに、瀬戸くんがこう言った。
「桐谷、その胸についてる赤い痕は…何?」