水泳のお時間
「瀬戸くん…あ、あのっ……」


わたしの言葉を遮って、瀬戸くんがつめよってくる。


その表情は明らかに不機嫌そうで、心中穏やかではない様子で、少し…怖い。


その光景に体中がすくみ、何も言えずにいたら

突然瀬戸くんに肩をつかまれ、ビックリしたわたしはとっさに目を押しつぶった。


「…誰?」

「ち、違うんです。これはその…」


そう言いかけて、とっさに視線を逸らそうとした私に

瀬戸くんが乱暴に壁を叩く音がした。


恐る恐る目を開けると、目の前では瀬戸くんが怖い顔をしてわたしを見ていて…。

思わずギュッと両手を握り締めた。


…どうしよう。気づかれてる。

瀬戸くん、怒ってる…。


「何が違うって?…違くないだろ?」

「は、はい…」

「これは誰に付けられた?名前は?」

「……っ」

「言わないなら水泳はもう教えない」

「!ご、ごめんなさ…!これは、その…お、小野くんに…」


わたしの言葉に、瀬戸くんが反応した気がした。

けれどすぐに平静を取り戻したように、いつもの表情でわたしを見おろす。
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