水泳のお時間
「――今日は背泳ぎの練習をしてみようか」


気を取り直し、これから泳ぐ練習を始めようといったその時、

瀬戸くんが腕を組みながら口を開いた。


その言葉に、わたしはキョトンと顔をあげる。


「背泳ぎ…?」

「今は桐谷の手元にゴーグルがない事を踏まえた上でね。背泳ぎなら唯一水に顔をつけずに泳ぐ事ができる泳法だから」

「あっ…」

「おいで」


そう言って、瀬戸くんはわたしの手を取ると、プールのふちを握らせた。

そのまま自然と重なった長い指先に、わたしは何も言えなくなる。


…これから瀬戸くんのどんな指導が始まるんだろう。

そう思ったら緊張して、今にも心臓がはちきれそうになって。


けれどその気持ちとは裏腹に疼きだす、わたしの体…。
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