水泳のお時間
しばらくして瀬戸くんは静かに唇を離すと、

わたしの胸元に出来た赤いものを見おろして微笑んだ。

するとその瞬間、わたしの体は一気に力が抜け、瀬戸くんの胸に倒れこんでしまった。


「大丈夫?」

「あ、は、はい…」


思わず倒れそうになったわたしを、瀬戸くんが受け止めてくれる。

そんなわたしの顔は、自分でも分かるくらい真っ赤で。


さっきまで呼吸をするのを必死にガマンしていた分、今になって苦しくなり、大きく肩を上下に動かして息をはきだした。


…び、びっくりした。

だってまさか瀬戸くんに…あ、あんな事されるなんて…


…どうしよう…

体中がドキドキ言って、おかしくなりそうだよ…


「…あっ、ご、ごめんなさい」


しばらく放心していると、突然学校の鐘が鳴り、我にかえったわたしは、

あわてて瀬戸くんの胸から離れる。


そんなわたしを前に、瀬戸くんは目を細めて微笑んだかと思うと、ここから立ち上がった。


「じゃ、俺はそろそろ戻って着替えて来るよ。桐谷もそうした方がいいんじゃない?」

「えっ」

「言うのもったいないから教えなかったけど、さっきから丸見えだよ、それ」


なんでもない顔でサラッとそう言いながら、

瀬戸くんはわたしの体を、わざとっぽく指さした。


瀬戸くんの言葉に、わたしは一瞬ポカンとしたあと、

おそるおそる目線を下におろしていく。


すると…

……!!


「俺としては、イイ眺めだけど」

「ひゃあぁ!?」


その瞬間、わたしは思わず大きな悲鳴をあげると、

急いで掛け布団を肩までかぶり、体を隠した。


そんなわたしを見て、目の前では瀬戸くんが肩を揺らしながら楽しそうに笑っている。


う、うそっ…!

わたし、あれからずっと水着のままだったんだ!!


は、恥ずかしい…!


「家まで送るから、着替えておいで」

「は、はいっ」


あまりの恥ずかしさに、耳まですっかり真っ赤になってしまい

とにかくコクコクとうなずき返すので精一杯でいると、

とつぜん瀬戸くんの指先がわたしの顎に触れ、優しく上に押し上げられてしまった。
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