水泳のお時間
「ふうーん。そっかー。そうだったのかー。どおりで最近知鶴ってば急に放課後遊んでくれなくなったと思った。あたし、これでもかなり寂しかったんだからね」

「ご、ごめん…!ずっと言えなくて…」

「んーまぁでもその理由も分かったし、すっきりした。って…あっ!見て知鶴!噂をすれば!瀬戸くん!!」

「えっ…!」


お手洗いを済ませ、教室に戻ろうと女子トイレを出ようとしたら、

先に前を歩いていたマキちゃんが突然大きく向こうを指さして言った。


瀬戸くん。


その名前に、思わずわたしの胸が高鳴る。


「ほらほら!知鶴!話してきなよ!あたしの事はいーからさ!」

「ええっ…!あっ、で、でも…い、今は先生と何か話してるみたいだし…」


邪魔したら悪いから…。


そう言って、もじもじと両手をいじりながら、

女子トイレに引き返し、中へと隠れてしまったわたしに、マキちゃんはハァーと大きなため息をはいた。


「もー!そんな逃げ腰で告白なんてできると思ってんのー?」

「……」

「まぁ、でも放課後はいやというほど瀬戸くんにイチャつけるみたいだし?あたしが心配するまでもないかー」

「!」

「それにしても今日は暑い!じめじめして超汗だく!まるで瀬戸くんと知鶴みたい」

「え?ええっ…?!」



テレビを付けると、梅雨はまだ続くと言うから。


そして今日もやっぱり空は曇っているから。


だから気がつかなかったんだ。



夏はもう、すぐ目の前まで来ているってことを―――。
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