水泳のお時間
さっきまでパラパラと降り出していたはずの雨は、いつの間にか激しさを増し


大きな音を立てて傘の上の布を弾いては、あっという間に滑り落ちていく。


そんな中、あれから学校を飛び出したわたしは、ひとり瀬戸くんの家の前へと走り出し、立っていた。



瀬戸くんの家を見あげながら、傘を握りしめていた手に、思わず力が入る。


…どうしよう。来てしまった。


自分から行動を起こすのは…

その上好きな人の家に何の連絡もなしに行くのは、今日が初めて。


突然押しかけて、ビックリさせてしまうかもしれない。

迷惑だって突き放されるかもしれない。


だけど……


「……っ」


直前で何度も悩んだ末、ようやく決意を固めたわたしは、

門の前に設置されていたボタンを思い切って押す。


その瞬間、一気に心臓の音がバクバクと大きくなって、今すぐにでも逃げ出したくなる衝動を必死に抑えながら


それでもわたしの足は瀬戸くんが出てきてくれるのを、ただジッと待ちつづけた。



「……」

だけど、どんなに待っても、瀬戸くんが出てくる様子も、家族の人が出てくる気配もなくて。


おそるおそる顔をあげてみると、瀬戸くんの家からは、どこからも明かりが付いていないみたいだった。


留守、なのかな…。


仕方なく、いったん諦めて引き返そうとしたその時。

突然、後ろから声がした。



「――桐谷?」
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