水泳のお時間
ドアを開けて急いでプールサイドに出てみると

そこにはちょうど今来た様子の瀬戸くんが見えた。


ふいに目が合ったので、こっちから先に声をかけようかかけまいか

しばらく迷っていたけれど、直前で瀬戸くんに甘く微笑み返されてしまい…


それだけでドキドキしてしまったわたしは結局

今日も自分から瀬戸くんに声をかけるという密かな目標は達成出来なかった。


緊張するとすぐ赤くなってしまうこの顔をどにかく隠したくて

とっさにうつ向いたわたしに、瀬戸くんは静かに微笑んだ。


「桐谷も今来たところ?」

「は、はい…っ」

「そっか。よかった」


目の前に映るのはいつものように目を細めて笑う瀬戸くん。


だから昨日の帰り際…

瀬戸くんがどこか愁いのあるように見えたのはわたしの気のせいだったのかなと思った。


それに今日は約束の時間に瀬戸くんを待たせることなく、しかも同じタイミングで来ることが出来たので単純に嬉しくなった。
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