水泳のお時間
「…手、貸そうか?」


シャワーを浴びて体をほぐしたら、早速とりかかるのは泳ぎの練習。


けれどなかなかプールの水に入れず戸惑うわたしに

先にプールに飛び込んでいた瀬戸くんが近づいて声をかけてくれた。


その優しさがすごく嬉しくて、つい甘えてしまいそうになったけれど

わたしは慌てて首を横にふると、とっさに笑ってみせる。


「だ、大丈夫。今日は一人で入ってみる…」

「そう?わかった」


わたしの言葉に瀬戸くんは優しい眼差しで頷いてくれた。

そしてわたしがいる所から少し離れたところまで移動したかと思うと、そこから様子を見守ってくれる。


それを知ったわたしはゴクリと息をのむと

腰を落とし目の前に広がる大きなプールの水面をおそるおそる見つめた。


…やっぱりまだ水に入ることへの抵抗はある。

だけど今日こそは誰の手も借りず、自分の力で入りたい。

そして一歩でも成長したわたしになって、瀬戸くんに認めてもらえる事ができたら…。


「……っ」


えいっ!


その瞬間、わたしは両手に力をこめた。
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