水泳のお時間
「!」


その瞬間、水しぶきのあがる大きな音がしたかと思うと、全身に冷たい感覚が走った。


その感触に驚いて、とっさに瞑っていた目を開けてみたら、わたしは大きなプールの水の中に立っていた。


気がつくとわたしはプールの底にしっかり足をつけて立っていて、何にも掴まらず自分の力だけでその場所に立っていて…。


その事実に何度も同じような瞬きを繰り返してしまう。


「……?」


え?あれ…?

あ…

わたし、もしかして本当にプールに入れた、の?

誰の手も借りず、自分の力で…?


「桐谷スゲーじゃん。これで苦手を一つ克服したな」


正直、今の状況を信じられずそのまま立ち尽くしていると、今まで様子を見守っていてくれた瀬戸くんが近づいてきた。

その時見た彼の笑顔に、やっとわたしは今自分が出来たことを改めて実感する。


「……」

あまりのことに、とっさに広げた自分の手のひらが思わず震えた。


そっか。

わたし、本当にプールに入れたんだ…。

誰の手も借りず、自分の…わたしの力で。

嬉しい!

すっごく嬉しい!!


「やった…っ…きゃっ…!?」


思わず気が抜けてしまい

つい手放しして喜ぼうとしたら、とっさに足裏を滑らしてしまう。


そのまま体勢が崩れ、驚いて悲鳴をあげた時には、わたしは目の前にいる瀬戸くんの体にしがみついていた。
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