水泳のお時間
「あ、あの…」

「今日は、ヒモつきなんだ」

「えっ?」


ひ、ひも…?


突然ポツリとつぶやいた瀬戸くんの言葉に、わたしはポカンとする。


それでも体は瀬戸くんに抱きしめられたままで

そのまま動けずにいると瀬戸くんの細長い指先がわたしの首筋に伸びてきた。


「せ、瀬戸くん…?」

「分かんない?これのことだよ」


淡々と微笑みながら、瀬戸くんがわざと触れてみせたのはそう…ビキニのヒモだった。


それは、わたしが昨日着てきた水着よりもいくらか露出が大きくて…

そしてもう少し大胆な感じの、ヒモ付きのビキニ。


これは一昨日、水着屋さんで買い物中偶然目に止まったもので、着る勇気は全くなかったけれど

あまりにも可愛かったからつい記念に買ってしまった物だった。


瀬戸くんの前で着てくるつもりは無かったものの

昨日の水着が乾かなかったので仕方なくこれを持って来たんだ。


「……」


自分でそう言い聞かせつつも、後ろめたさは否めない。

とにかく恥ずかしくて、瀬戸くんから目をそらしてしまった。


やだな…タダでさえ自分の体型に落ち込んでるのに

また自意識過剰みたく思われたくないよ…。
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