水泳のお時間
「どうだった?」

「えっ?」

「水に潜った感想だよ。どうだった?」


感想?


突然その話を切り出されて、わたしは一瞬ポカンとする。


そのまましばらく戸惑ったけれど

それでもわたしの返事を待っている様子の瀬戸くんを見て、ギュッと両手をにぎりしめた。


「…わたし、潜るまでは水が恐くて、正直キライでした」

「うん」

「でも実際潜ってみたらそんな気持ちすっかり忘れていたんです。とにかく神秘的で、水面から見るよりずっとキレイで、ここから上がりたくない。ずっと見ていたいって、そう思いました」


わたしの言葉に、瀬戸くんはとても嬉しそうに微笑んでくれた気がした。

そしてわたしの頭をヨシヨシと優しく撫でてくれて。


その瞬間、わたしはついいつものクセで俯いてしまったけれど、本当はすごく嬉しかった。


…瀬戸くんは私にたくさんの事を教えてくれる。

泳ぐことの楽しさや嬉しさ。そして水の中って本当は美しく素晴らしい世界だってこと。

全部、瀬戸くんに教えてもらった気がする。



…わたし、もしかしたら本当に泳げるようになれるかもしれない。

恐かった水だって、きっと好きになれるかもしれない。

瀬戸くんといると、不可能も可能に変えられる。

まるでそんな気持ちにさせてくれるから…。
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