水泳のお時間
「あ、そうだ。ゴーグル…!」


瀬戸くんに返さなくちゃ!


とっさにその話で自分がゴーグルを借りたままだったと言うことを思い出し


わたしは急いで通学カバンのファスナーを開けると、中をゴソゴソとあさる。


そして見つけたゴーグルを慌てて差し出そうとしたら、直前で瀬戸くんに止められてしまった。


「あー待って。そのゴーグルの事ならいいよ。桐谷にあげるよ」

「えっ?」


思いがけない言葉にわたしは目を大きくひらく。


そしてそのままポカンとしてしまったわたしに、瀬戸くんはフッと微笑んだ。


「そのゴーグルは、初めて桐谷が水に潜れた…俺からのプレゼントってことで」

「!で、でも…」


そう言われても、瀬戸くんの私物をわたしなんかが貰ってしまうなんて…


そんなの悪い気がして、つい遠慮してしまったわたしに

瀬戸くんがどこか切なげな表情をしてこっちを見つめてきた。


「桐谷はイヤ?欲しくない?」

「!そ、そんなこと…ないですっ」


瀬戸くんの言葉に、わたしはすぐさま顔をブンブンと横にふる。


イヤなんてそんな…!瀬戸くんから貰う物に、そんな失礼なこと…思うはずないのに!


むしろ嬉しい。すっごく嬉しいよ…!
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