異常性欲の二人
事故があった現場を見た僕の両親や兄弟たちは口々に「運が良かったね」そう言った。
確かにそうかもしれない。転落地点があと50センチずれていたら、間違いなく僕は車もろとも池に落ちて水死していただろう。
震災は罪もない大勢の人々の命を奪った。なのに罪深い僕は生きている。やはり、この世に神様なんていない。
大型クレーン車にゆっくりと釣り上げられていく車を茫然と見つめていた。
もう一人の僕のが言う。「死ななくてよかったな。これでわかっただろう?元々お前に死ぬ勇気なんてなかったんだ。なぜならお前はまだまだ世の中に未練がある…」
『未練?バカな、4年以上も連れ添った妻にも見捨てられてしまった僕に、いまさら未練なんてあるはずがない』
「ウソをつくな、この変態野郎め。お前は世間体ばかりを気にして、自分の本能を胸の奥に押し込めたまま生きてきた。本当はあの女子中学生を調教したいと思ってるんだろ?」
『違う、僕はそんな鬼畜じゃない。だいたいそんなこと犯罪じゃないか』
「あははっ、おいおい犯罪だと?確かに法律上は犯罪かもしれないが、しかし無理矢理やるわけじゃないだろ。それどころか彼女はお前に調教されることを望んでいるんだぞ?」
『でもそれは…』
「あいつの彼女だからって遠慮することないだろ。あいつから頼んできたんだぞ?自分の彼女を調教して欲しいって」
『ああ、そうだ…』
僕はそんなふうに自問自答を繰り返しながら、高校時代の友人である「桐野」から突然かかってきた電話の内容を思い返していた。
それは驚くべき内容だった……。