折れたピアスはあたしたちみたいで。
「なんなのあいつっ!!好きって言ったの誰だっつの!『あたしもすき』とか言ったあたしが馬鹿だったの?!てか誰を好きになったのよっ!あたしの知ってる人なの?!知ってもあたしが負けたんだから何も言えないけどさ!あたしその人になりたかったよ!こんなに!こんなに好きだったのに!!あー!もっ...ほんとあたし、ツイてないし...」
「す、すごいよ、美紅。あたし、美紅が『あたしもすき』なんて言ってるとこ想像できないよ...」
「そこかよっ」
あたしは今、親友の梨菜ともうひとりの男の親友の英雄とカラオケに来ている。
カラオケはマイクでどれだけ叫んでも外には耳音立てない限り聞こえないからストレス発散にはもってこいの場所だ。
「その傷ついた心を癒してくれる人現れたらいいのにねえ。あ、美紅にはまだいないかな?」
「大丈夫だし!いるし!」
梨菜に反抗してガシッと英雄の腕に自分の腕をからませた。
「うお!」
「ね~!ひーろー!梨菜!あたしの男の親友は英雄しかいないんだからね!」
「へ~、親友ねーえ...残念だわあ」
そういいながら梨菜は英雄にニヤニヤと目を合わせた。
「親友か...」
「え、だって英雄あたしの親友でしょ?ち、違うの...?」
「あ、そうだって!親友、親友!」
「だーよーねー♪」
「あ、ははははは...」
...英雄には悪いけど、英雄はあたしの事が好き。そんなの見てわかる。
でも、あたしは今の関係を壊したくない。
だから、知らないふりしてる。
知らないふりしなきゃ、英雄を傷つけてしまいそうで。
そして、あたしが振られた今、英雄の優しさに頼る事なんてできない。
...あたしは、英雄と今の距離を保つことしかできない。
「みーく??」
「え、あ、ごめ...よし!歌うぞ!」
「お。いいねえ~♪」
「あたしが選曲するから知ってなかったら言ってねー」
「あ、だめだめ!あたしが今から言うやつね!」
「おっけ~」