甘い言葉で
柚希side―――――
塾長が晩飯の準備のため俺たちを呼びつける。監視役が居なくなるし、チビ達も昼寝の時間だろうし皆でバンガローに戻る。
晩御飯の準備は陽一さんが仕切る。
塾長の甥っ子だ。
アウトドアが好きらしく、毎年キャンプに参加してくれる。俺たちにとって頼もしい兄貴だ。
「おい、ユズ」
さっきまで女に囲まれていたタローが俺のすぐ隣にやって来た。
なんか変なこと企んでそうな顔だよな。
「なんだよ?お前の担当は飯炊きだろう?火加減気を付けろよな?焦げた飯なんか食いたくねーぞ?」
「なんだよ、ユズ。つれないな~」
俺の体に寄りかかるように巻き付いてくる。巻き付けた腕を剥がしながら
「お前に抱きつかれても嬉しかねーよ!」
そう叫んでも、効果なし。
今度は俺の耳に口を近づけて
「あゆみちゃん、向こうのバンガローで、チビ達の話し相手してるってさ。これから火を扱うから、チビ達には触らせたくないんだろうな。」
『塾長と陽一さんの考えだからな。まぁ、チビ達がいるとはかどる前に邪魔だしな』
なんて、キツい一言をいいながらも遠回しにあいつらを心配してる。
こいつも、基本は優しいやつなんだよな。
「で、なんで俺にあゆみちゃんの場所を教えるわけ?なに企んでるんだよ?」
「企んでるなんて......っとに、人聞きの悪いユズだねぇ~」
「タローの普段の行動からすればそう思われても仕方がないんだよ」