甘い言葉で
「じゃあ、行ってきます!」
「はーい、一応家の鍵持っていってね。あ、それと......」
「わかってるよ!受験生なりお参りとかちゃんとしてくるしっ!遅くならないように、もしもの時は連絡も入れるから」
「そう?気を付けるのよ?」
「はーい、いってくるよ」
「いってらっしゃい」
もう!お母さんってばうるさい!
あたしより神経質じゃない?
三が日は塾も休みだからやっとのんびり出来るんだから好きにさせてよね!
昨日まで頑張ったんだからさ!
自転車をこぎながら、ユズくんとの待ち合わせ場所へ急ぐ。
少しの時間しか離れていなかったのにもう会いたくて仕方がない。
冷たい風が頬を撫でても、あたしの行く手を阻んでも負けずに自転車のペダルを漕いだ。
待ち合わせ場所は近くを流れる川沿いに橋があって、その角に個人経営の本屋さんがある。そこの自販機前で待ち合わせ。
『あ、あたしの方が先かな?』何て思いながら、数十メートル先の自販機を目指していると横から一台の自転車が顔を出した。
もしかして?なんて気分が高ぶる。早く会いたい!ユズくんに会いたい!急げ~!!
ペダルを漕ぐスピードが増していくと、ユズくんに会いたい気持ちと比例してる感じ。自然と顔がにやけていくのが分かる。
『キキーッ!』と、自転車のブレーキをかける。
自販機の隣で待っている自転車に胯がっている人をみると......
「あゆみ、明けましておめでとう。早かったね」
いつもの笑顔のユズくんがいた。
その笑顔が見れただけで、自転車から降りてスタンドをたてて、ユズくんに近付いて
「ユズくん、明けましておめでとうございます!今年もよろしくね」
そう言いながらユズくんに抱きついた。
マフラーを巻いているユズくんの首もとにあたしの顔があるんだけど......ユズくんのマフラー肌触りが気持ちいいな~
離れたくないなぁ~なんてスリスリしていたら
「うん。こちらこそ宜しく......」
ユズくんのてがあたしの腰とおしりにそっと置かれた。