甘い言葉で


さて、まずは全体運だよね。
100円入れて箱の中に沢山あるおみくじをガサゴソしてひとつのおみくじを選ぶ。
あたしの次はユズくん。


二人揃って『せーの』で広げる。
あ、あたしの小吉。
......んー、まずまずじゃない?
あまり良すぎても怖いしね。
願い事は......『諦めなければかなう』
お?良いじゃないの!


次はユズくん。ん?早々と折り畳んじゃった。


「ユズくん、なんで隠すの?」


あたしがおみくじを小さく畳むユズくんの手を掴むと


「あ?うん。俺のはいいよ、見なくて。ね?」


掴んでいるユズくんの手を外されてあたしの頬を撫でてきた。
ちょいと、おかしいですよ?その態度。何かありましたね?隠し事はよくないよ?


「ユズくん。あたしより良くても悪くても気にしないから、見せて」


手のひらをユズくんに出しておみくじを見せるよう催促する。
もちろん、笑顔でね。


「......泣かないでよ?」


ん?
『泣かないでよ?』ですって?
なんじゃそりゃ?


「大丈夫。泣かないもんね」


えへんと胸を張って答える。
一体何に対して泣くのよ?
あたしの粘りに負けたユズくんは渋々畳んだおみくじを見せてくれた。


「どれどれ?拝借~」


広げて見えた文字は『大吉』
ん?羨ましいぞ?
気になった言葉に視線を持っていくと、
待ち人......『来ない』?
来ないってなによっ!
ユズくんにとっての待ち人ってあたしじゃないの?此処に居るじゃん!


泣くどころか腹立ちますけど?
願い事......『必ず叶う』
ちょっと、いや凄く羨ましいぞ?

健康......『問題なし』
.........なにも言わないよ。
恋愛.........
もういいや、みない。
どうせおみくじだもんね。
当たるも八卦、当たらぬも八卦


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