愛してると囁いて【短編】
「――…かつ…君…好き…」

















『好き』


歌音のその言葉が俺の中でエコーする。

なんというか……不覚にも俺は胸が高鳴るのを感じた。

放課後、後輩から告られた時には感じなかった症状だ。


それを表には出さず、俺は更ににんまりと笑みを深めた。



「歌音…それはラブ?ライク?」


「えっと…ライ…」


「…歌音?」


「うっウソウソ!ラブ、ラブだよ!!」



凄みのある声で囁き、こまれで以上に近づくと真っ先に否定した。

そんなに俺に近づかれるのか嫌なのか…胸の奥がチクリと痛むのを感じる。


まあ歌音は歌音でバリバリ警戒してんだから仕方ねぇか。



「ラブ…?俺、英語苦手なんだよね。訳して言ってよ」


「え…さっき使ってたじゃん…」


「……歌音ちゃん?」


「わ、わかった、わかった!!あたしが訳してあげるよぉ!」



また、手をブンブンふって断固否定された。

また、胸がチクリと痛んだ気がした。

なんだよこれ。ムカつくな。

癌か?嫌だなー。



「ほら…歌音、言えよ…」



俺が更にそう促すと、歌音は赤いままの顔で「…じゃあ一回だけだよ」と言って深く息を吸った。



「………かつ君」


「なんでしょうか」





















「……愛してるよ…」



< 16 / 31 >

この作品をシェア

pagetop