愛してると囁いて【短編】
涙をためて俺を見上げる瞳…

俺はまた、…不覚にもときめいてしまったのだ。



「………もう一回プリーズ」


「ぇ…てか英語使ってんじゃん」


「…いいからいいから」


「……一回だけってあたし言っ…」


「………かのーんちゃーん?言わないのー?」


「……うぅ…」


「次はちゃんと俺の名前呼んでもう一回ね」



歌音とは全く逆に余裕しゃくしゃくなで笑う俺。

歌音は観念したように、深く肩を落とした。

そしてまた深く息を吸い込み、もう一度…



「――…か、かつ君愛してる…」


「…………もう一回」


「……………かつ君…愛してる」


「もう一回」


「…かつ君愛してる」


「もう一回」


「――…もう!かつ君愛してるってば!」



最後に、やけになったのかベンチから勢いよく立ち上がった。

ブランコで遊んでいた小学生くらいの子供が、変な物でもみるように歌音を凝視する。

それに気付いて、ハッとした歌音はあたふたしながらベンチに座り直した。



「……もう…!子供に見られてるじゃん!恥ずかしい…」



歌音の方はぶつくさ文句を言いながら、あまりにも凝視してくる子供の視線から逃れようと俺の後ろに隠れた。が、俺はそんなことどうでもよかった。



「ま…マジかわいい…」


「……………え…?」



ほんのり頬が朱に染まる俺を見て、つられて歌音も頬も朱に染まる。

元々歌音の頬は赤かったから更にだ。



「マジかわいい…歌音もう一回…」



最初、俺がクイズの提案を出したとき、歌音がこんなにかわいい反応を見せるとは思ってもいなかった。


俺はハマってしまったんだろうか。

こいつに。



< 17 / 31 >

この作品をシェア

pagetop