愛してると囁いて【短編】
「な、何をするんだ…?」


「うふふー!あたしね、今度デジモンの映画みたいの」



また、デジモンかよ…

しかも古いよデジモン…

まだポケモンの方がいいって歌音。考え直せよ歌音。



「………それで、何?」


「えっとー…今度映画一緒に行こ!かつ君のおごりでね!!」



思いがけないバツゲームに俺は目をパチクリさせた。

なんだそれ。デートか?

別に、俺にとってはバツゲームでもなんでもないんだけど。



「本当は美代ちゃんと見に行こうって約束してたんだけど、なんか予定入っちゃったらしいから行く人いなくて…」



そりゃ、入っちゃったじゃなくて入れちゃったの間違いだろ。

俺が美代ちゃんの立場なら無理矢理でも用事つくって断るな。


美代ちゃんご苦労様。



「それさぁ…俺じゃなくて、その好きな奴誘えば…?」


「…………え…?」



俺の提案に何故か歌音は顔を曇らせた。

なんだよその顔。まだムンクの方がいいよ。




「……まだわかんないの?」


「……?」



歌音の表情が真剣になった。

何故このタイミングで真顔?

ここって真剣な場?違くね?





……すると、だんだんと歌音のその表情が怒りに変わっていくのがわかった。

あれ、すげぇ怒ってる気がする。顔も林檎ちゃんみたいだし。



「――…もういいよっ!ばか!!」



ベンチから立ち上がり、俺を怒鳴り付けた。

眉間には深いシワが刻まれ、怒っているはずなのに大きな瞳は悲しみを帯びていた。


俺はわけがわからず、クエスチョンマークを辺りに飛ばす。



「ば…ばかって…」


「なんでわかんないの!馬鹿だよ馬鹿!!」


「馬鹿連呼すんなっ!」


< 22 / 31 >

この作品をシェア

pagetop