サンタの服が赤い理由。
机の上の物は荒らされているのに、机の引き出しの中は荒らされていないのです。
机の上まで見たのだから、引き出しの中を見ない訳はありません。
なのに、なぜでしょう。
「……まさか……!」
サンタさんは、ある可能性に思い当たりました。
机の引き出しの中には、世界中の子供たちの家の地図や、子供たちがそれぞれ何を欲しがっているのかが書かれたリストなど、サンタさんがサンタさんの仕事をする上で必要な物が入っていたのでした。
これらは、サンタさんの宝物です。
これらを無くして、サンタさんの仕事は出来ません。
でも、これらの物がここにあることを知っているのは、サンタさんと奥さんだけ。
他には誰も知りません。
奥さんは、サンタさんがサンタさんの仕事をすることを、ずっと応援してくれていました。
サンタさんは、奥さんが強盗に気づき、引き出しの中の物を守ろうとしたのではないかと思ったのです。
当然そうなれば、強盗は奥さんを殺すでしょう。
サンタさんの目から、枯れたはずの涙が、また溢れてきました。
「これらがあったからといって……お前がいない世界で、私はこの仕事を続けることはできないのに……お前が一番の宝物なのに……」
サンタさんは、そう言って、泣き続けました。