隣の女
<その日の午後4時頃>

社長から、4時半過ぎには
出かける準備を完了しておく
よう言われていた朝子は

トイレで化粧を直していた。

そして、ドアの枠のステンレスに
映る自分の全身を遠目にみながら
ため息をついていた。

ごくごく普通のベージュの
ハイネックのコットンセーターに
こげ茶のパンツスーツ。

しかも、もう三年も
着ている代物である。

皮のショルダーバックも
かなり草臥れている。

「全くもぅ。社長ももう少し
 気を利かせてくれればいいのにさぁ。」

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