隣の女

料理教室

会社についた朝子は

「社長、昨日はお疲れ様でした。」

「おお、お疲れさん。どうもな。」

「ご馳走様でした。ホントに美味しかったですぅ♪」

「そっかぁ‥そりゃ、よかった。‥で、どうだ?」

「えっ?」

「ほら、あの速水さんって人だよ。」

「あぁ、今朝、電車でお会いしましたよ。」

「えっ?そうなの?」

「えぇ、速水さんは私の二つ手前の駅に

 お住まいみたいなんですよ。」

「へぇ、話したの?」

「えぇ、偶然同じ車両に乗り合わせて‥

 私から声をかけたんです。」

それは、ウソである。

朝子は随分前からハデージョを知っている。

でも、なぜかそれは言いたくなかったのだ。

「で、なんだって?」

「いえ、今朝は彼女のお料理教室に顔を

 出してみないかって誘われたので‥

 私も興味があるから一度行ってみようかと‥」

「ふ~ん。俺はどうもダメだ、あの人。」

「そうですかぁ?思ってたより気さくな人ですよ。

 私も初対面だった昨日の段階ではもっと澄ました

 感じの人かと感じたんですが‥。

 今朝‥ちょっとだけですが改めて話した感じだと

 随分違うなぁ~って‥」

「そうかなぁ、俺はなんか‥う~ん。苦手だわ。

 でも、朝子ちゃん、その料理教室だっけ?

 一度行ってまた様子を知らせてよ。

 仕事の話は別に急がないから、その後にでも

 ちょっと、また考えるわ。」

「そうですか?えぇ、近いうちに行ってみる
 
 つもりですから‥ご報告しますよ♪」

「うん、そうしてみてよ。頼むよ。」

「はい‥」

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