隣の女
朝子も慌てて、会釈をしながら受け取った。

アシスタントの女性がこちらに向かって今夜の献立の説明を始めた。

‥そうだ、あの女性が例の弟の彼女?‥とアイランド型の調理台の向こうで

「あれかぁ‥」

またしても、朝子は料理どころではない。

アシスタントから目が離せなくなっていた。

その女性は、34歳くらいか?!

見た目は、まるでフライトアテンダントだ。

そう、油の乗り切った『スッチー!』って感じ。

きゅっとまとめた髪も決して茶髪などではなく黒い髪で、一本の乱れもない。

ストライプのカットソーにクリーム色のパンツ。

こちらも、どう見ても安物には見えない。

そりゃ、そうだ。

この部屋の住人だというのだから、当たり前である。

朝子はなんだか頭がくらくらしてきた。

やはり、ここは自分には場違いな場所なのだ。

気もそぞろに、ぼんやりと調理台に目をやると

ハデージョと目が合った。

「やっば‥」

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