Merry Christmas!
暗いアパート前には、一応明かりがある。とはいえ回りはもう暗いし、雪もちらついている。寒いはずである。
だって。
「風間君…?」
何で!?
ちょっと待って、と慌ててチェーンをはずして扉を開ける。鳥肌がたつくらいの寒さに縮こまりそうになるが、「どうして」風間君が家の前にいるのかの方が気になる。どうして?
上着に雪がかかり、髪の毛にもわずかについている。鼻先が寒さで赤くなっていて、「こんばんは」と何故か挨拶。うっかり私も「こんばんは」と。
いや、そうじゃなくて。
我に返った私は、早く入ってと言おうとした。だが、「千鶴」と呼ばれて、振り返る。
―――目の前が赤色になった。
それはやわらかそうな赤の花弁を持つ薔薇の花束。それから気づかなかったが、大きい荷物を背中にぶら下げて、まるで、それは。
驚いている私に「実は」と風間君がいう。
「バイトしてたのはさ、一緒に出掛けるための資金にしたくてさ。旅行とか行けたら楽しいだろう?」
それは、そうだけど。
「で、驚かせたくてばっちり休みをとって来たんだ」
「休みを…?じゃあ」
一緒に過ごせる、の?
どうしようどうしよう。
やばい。嬉しい。
「メリークリスマス!風間サンタですけど、どうです?いります?」
「―――いります!」
私は問答無用に抱きついた。
《Merry Christmas!》
14/12/23