WILL ~あなたの願い、叶えます~
伸びてきた手が耳に触れて、大きな手のひらが、片頬を包み込む。

「こう?」

親指が、目尻にたまった雫を払う。
まるで恋人にするような、優しく愛しむ触れ方だった。

「圭輔、は」

「それとも、こう?」

被さってきた店長の鎖骨が視界を埋めて、髪に降ってくるキス。

「けい、すけ……」

「由紀」

今日は。
クリスマスイブは、圭輔と2人……

「圭輔」

「由紀」


背中に手をまわして縋った。
相手が、圭輔じゃないことは分かっていたのに。
< 183 / 353 >

この作品をシェア

pagetop