WILL ~あなたの願い、叶えます~
冷静になると同時に、心もすっと冷えた。
凍てつく空気は雪山なら爽快なのに、心の中だとキツい。
無防備に溺れたことを後悔して、聡史が中途半端な距離に近づいてきたことを恨んだ。


『あの夜』を、彼が掘り返したことなど一度もなかった。
私もずっと、あの日に触れずに来た。


2人とも酔っていたし。
2人とも、フラれたてで。

ちょっと勢いに任せて、身体を寄せて慰め合った。
ただそれだけなのだ。

そして私は、忘れたことに――なかったことに、するべきなのだ。
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