WILL ~あなたの願い、叶えます~
手すら繋がない、甘い言葉も空気もないのに。
友達以上恋人未満を地で行くような曖昧な関係は、『あの夜』によく似ていて。


事あるごとに思い起こしては1人で悶絶した。
後悔だったり羞恥だったり、ときめいたり悩んだり――時には、熱がこみ上げて来たり。

最早病気の域だと、自覚はしていた。


……ああ、そうか。
これが、世間様が『恋の病』って呼ぶやつなんだ。


決定的な出来事は、秋の気配が近付いた頃に起こった。
聡史が30の誕生日を迎えたその日を、例の赤暖簾で、2人だけで祝っていた時に。
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