WILL ~あなたの願い、叶えます~
更衣室でこんな大声で怒鳴り合っていれば、当然――……。


「丸聞こえだ、阿呆ども」

開店ぎりぎりまで戦ってから更衣室を飛び出したところで、2人そろって店長のゲンコツを貰った。

「暴力反対!」

「パワハラだパワハラ」

「愛の鞭だ。……ほらさっさと売り場行け」

と、いつものように追い立てられる。

きっとまたプライバシーの大放出だったわけで、売り場に急ぐ麻里ちゃんの背中に気付かれもしない無意味な睨みをきかせた。


「七瀬」

「はいっ?」

このまま私も売り場に急がないといけない時間なのに、何故か、1人だけ呼び止められる。

怪訝に思って店長を振り返った瞬間。
じっと深刻な眼差しで見下ろされて――、身動きが、取れなくなった。

「あ、の……?」
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